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ことばの変化 論語と易経  [小さなひととき]

孔子の人生が、易経に重なる?!

孔子の人生を念頭に置き、易経の乾為天(天下天上)を閲覧したときに、ふと、この易の爻(こう)がその人生に重複して見えた。

占いで、爻(易の卦を表す横線)が3つ1組で、卦(占いに使用される記号;8種類、上下で64卦)に分かれる。この卦を用いて、自然界、社会、人事のあらゆる事象を象徴する。
最初の卦が「乾」であり、龍に譬えて表現している。
初爻 二爻 三爻 四爻 五爻 上爻 と記載すると、
易の卦で、下からの項目が、物事の最初(初爻)を含意し、
一番上にある項目が、物事の終末(上爻)を含意する。

思うところを記載する。易経の乾と論語の学而を重ね合わせる。
乾         当てはめたこと
初爻(初九)潜龍  孔子の15 志学  変爻 乾→姤
二爻(九二)見龍  孔子の30 而立     乾→同人
三爻(九三)    孔子の40 不惑     乾→履
四爻(九四)    孔子の50 知命     乾→小蓄
五爻(九五)飛龍  孔子の60 耳順     乾→大有
上爻(上九)亢龍  孔子の70 従心     乾→夬
  (用九)群龍               未詳

私見となるが、
自然界、人生のすべての事象を時間軸で捉えたとき、
孔子の人生を、易経の最初の卦となる「乾」で推しはかるのがわかりやすい。
最初の年齢ごろ(15)までなら、地に潜む龍のごとし(潜龍)。
世に出てきて、周囲に認められるようになると、その龍の姿を目にすることができる(見龍)。
しっかりと働き出して、自他ともに自信にみなぎる間は、大きな難関も超えていくだろうし、そこに人生で、惑うことはないだろうし、それを自らの運命として位置付けてもよく、60までには、まさに飛ぶ鳥(龍)のごとし。
されど、70近くになると、さてさて、矩(のり:規則、決まりごと:転じて、自然の力・法則)に耳を傾け、天寿を全うするのがよしと知るべきか。
孔子の人生は、易のいう、その自然な流れを全うしたのかもしれない。

孔子は、繋辞上で「乾」の項を見ると、易の役割を伝えている。
「乾の働きはそれ自体が、健 ー創造的ーであり、動いてやまない。従って、乾の知(つかさど)る創造ということも、何ら阻害されることなく、容易に果たされる。」(261ページ)
「人間の行ないも、乾のようにたやすく自然であれば、その心は明々白々、何人にも知りやすいものとなる。」(262ページ)
本田済 易下 中国古典選1 朝日新聞社 261−262 1978

人生のところどころで、山あり谷ありの事態には、変じた爻の卦を見て、参考にしていたのだろう。
40、50で龍に例えた記載は、これまでにあるのだろうか。それらしいものはあっても、確定せず。
孔子は、易の辞で九三(40)の意を、「君子進徳修業。」とし、「君子(リーダー)は、人徳を磨き、業績を積み重ねる」ことだとの意味合いを示し、
九四(50)の意を「上下无常。非為邪也。進退无恒。非離群也。」とし、超訳すれば、「組織の上に媚びたり、下に合わせたりして、悪いことをしようと意図しているわけでもない。進退にしても、変化を求めているわけでもなく、組織(群れ)から飛び出して何かしようというのは、時期尚早で、組織から離れることなく、業務に勤めよ。いずれその差配が信用につながる。」と、飛躍する機会をきちんと見極めよと、受け止める。

自分が占いをするとき、世の中の変化に左右される我が身を考えるには、この向きで考える。

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